書の窓辺 Vol.58日本書道教育協会

日書協情報「書の窓辺」

2014年12月・2015年1月号 Vol.58 平成26.12.1発行

<Contents>
【TOPIC】◇書作品『米百文』誕生!
【書とビジネス】◇おもてなしの心
【硯海】◇興福寺南円堂銅燈台銘  -歴史は語るー
【クリッピング】和紙が世界遺産に
【こころに残る言葉】◇高倉健さんの名言
【BOOKナビ】万葉集と日本人読み継がれる千二百年の歴史
【事務局だより】
  ◇総合書道(競書)誌『習字塾』会員の募集!
  ◇「仮名条幅講座」受講者の募集!(初心者歓迎)
  ◇情報紙『書の窓辺』の贈呈について

TOPIC

書作品『米百文』誕生!

― “ふじのくに和の食の振興”に花 ―
平形精一(号・精逸)静岡大学名誉教授・常葉大学教育学部教授・日展会友と日本書道教育協会が制作協力した、書作品『米百文(こめひゃくもん)』がこのほど完成した。001
12月6日~7日まで県が盛大に開催する“「和食」のユネスコ無形文化遺産登録一周年”記念・『ふじのくに和の食文化の祭典』(於:県総合コンベンション施設プラサヴェルデ・沼津市追手町)のハレの場・開会式で、平形教授から静岡県に贈呈する。
作品は、歴史的文献や資料を基に、古代中国の殷・周の時代から日本の江戸まで時空を超えて伝わる、古今東西の名筆・王羲之、空海をはじめ徳川家康などの多くの書跡を調べ集めた「米」の文字、約450字から100字を厳選し、学術・芸術的な価値・オリジナル性を追究、平形精逸教授が臨書揮毫し現代に蘇らせた。同教授の書作品『百茶文』・『百花文』に次ぐ史上初の作品である。
和食が世界遺産に登録されたが「食の中枢を担うのは米」であり、日本の食文化は“米”を抜いては語れない。作品は、和食の世界遺産、静岡県が提唱・推進する「食の都しずおか」・「ふじのくに和の食文化」のさらなる興隆・発展を願うもので、「産業・文化と書のコラボレーション」の発露でもある。
主題の「米」の字体はシンメトリーで単純、字典に収められた文字数も少なく作品素材としては向かないが斯業振興のため、あえて挑戦した。落款の制作月は、「和食の日(11月24日)」に因み「霜月」とした。大きさは縦95㎝×横70㎝・二段浮かしの額装、『百茶文』と同じ仕様である。
作品は、贈呈後会場内に『百茶文』と並べて公開展示され、今後は各種の公的行事に活用される。墨痕鮮やかな書が、“食の都しずおか”の「和の食の文化発信」に花を添えることを期待したい。この機会に多くの皆様に、書と産業・文化の調和その妙味、書の持つ素晴らしい魅力・「書の力」を感じ関心をいただきたいものである。

書とビジネス

おもてなしの心

以前、小欄(Vol.17)で、「料理と書」をテーマに大阪の有名な上方料理の女将の想いを紹介した。その内容は概ね、「“料理は総合芸術”食物のうまさを、理想的に有頂天に持ってゆくには、食物の吟味ばかりでは、物足りなくなってくる…目と舌を有頂天に満足さすわけには行かない。絵画、書道、茶道、彫刻、花―そういったものをきわめないと料理一つが活きてこない…料理をとことん極めていけば総合芸術」である。
 11月には「全国お茶のサミット」で和食の話。先日は「和の食文化シンポジウム」で熊倉功夫静岡文化芸術大学学長、髙橋英一京都南禅寺畔 瓢亭(ひょうてい)十四代当主・日本料理の「現代の名工」、渡邉妙子佐野美術館館長の鼎談で、興味深い話を聞いた。
熊倉先生によると「和食」とは、単に「食」だけでなく“おもてなし・マナー”も含むと伺ったような気がする。「床の間の掛物に関心が薄くなっている。座敷に入ってさっと座ってしまう。若い人に限らず多い…。床を見てから座ってほしい…」と髙橋当主。この話を聞いて、編集子も千利休が伝える「掛物ほどの第一の道具ハなし…」への思いや、「床の拝見」など自身の作法のなさに恥入る。
熊倉学長が話されたが、「瓢亭の髙橋当主は床の間に飾る花は自ら栽培し、活けるのもご自分で、…」と言われた。また、「床の間」のしつらえ・掛物は、「季節、お客様のことを想い・考えてその時期、その場の雰囲気を斟酌し掛けかえる。例えばと表千家には「表」に、裏千家には「裏」に、それぞれの流儀に合わせる…」と当主は話された。そこには計り知れない大変な心づかいがあることを教わった。自分の知の無さ、日本文化の深さ、それぞれの斯道の奥深さを感じる一コマであった。

硯海

興福寺南円堂銅燈台銘    ― 歴史は語る ―

58-2122
奈良・南都七大寺の一つ藤原氏の氏寺、興福寺に「南円堂銅燈台銘」がある。
興福寺は僧兵を擁し、春日の神木をくりだして強訴し、強大な勢力と威をふるった。そのため幾多の戦いに巻き込まれ多くの建物が消失したが、南円堂の堂前に立っていた円形の燈籠は頂上の宝珠を除き残されている。 
これは、現存する古い金属製燈籠のうちでは、東大寺大仏殿の前の燈籠に次ぐもの
で、弘仁7年(816)に鋳造されたものである。
「銅燈台銘」は、一面は両開きの扉、他の五面は羽目になっていたと考えられるが、両開きの扉と羽目1枚が亡失しているため撰文・筆者が不明である。
空海の撰文で逸勢の書、または空海の撰文および書とも伝えられている。羽目には一面7行に区切り1行9字の配字で、陽文で鋳込まれている。
専門家によると、「肉高に鋳出した肉太の書風は、整然とした楷書で天平時代の厳格な写経の字に比較するとやや豊潤で、わずかに草意を含んだ趣が感じとれる」という。
「南円堂銅燈台銘」は、京都・神護寺鐘の銘、和歌山・道澄寺鐘の銘と共に書道史を代表する三銘文といわれている。
徳井伸行(青森山田高校通信制課程講師)
〔写真左:燈籠火袋・一部/写真右:燈籠火袋の羽目・一部〕

クリッピング

和紙が世界遺産に

 ―日本文化・書にも励み―

 書写・書道にとって欠くことのできない「四宝文房」(硯・墨・紙・筆)の一つ、「和紙 日本の手漉(手漉き)和紙技術」が、11月26日ユネスコの無形文化遺産に登録された。
 登録対象は、国の重要無形文化財に指定されている「石川半紙」・「本美濃紙」・「細川紙」であり、日本の和紙の素晴らしさが世界に評価された。その話題について、11月28日の中日新聞に興味深い記事があったので紹介する。

中日春秋 (中日新聞2014.11.28付けコラムより)
明治の世となり、来日した欧米人を驚かせたものの一つは、この国の紙の文化の豊かさであった。英国人の学者チェンバレンは『日本事物誌』に、こう書いている
▼<日本人は、われわれ西洋人が夢にも思いつかないような数多くの用途に紙を用いている。理由の一つは、彼らの製造工程では、紙を作る樹皮の長い繊維を切らずにおくということである。したがって、その紙はわれわれのものよりずっと強靭(きょうじん)となっている>
▼筆記のためだけでなく、扇となり障子となり衣服にもなる。やはり明治初年に来日した米国人は、深い切り傷を負った人が紙屋に助けを求めたことを書き残している。和紙は包帯代わりにも使われていたのだ▼その和紙は今や文化財の包帯として、各国でつかわれているそうだ。例えば両面印刷の
ため裏打ちもできない西洋の稀覯(きこう)本を補修するには、貼れば透けて見えるほど薄く、しかも強靭な和紙が用いられているという。
▼東京文化財研究所の国際情報研究室長として各国の修復専門家と協力を進める加藤雅人さんは「本美濃紙などは千年以上前から使われ、きちんと残ってきた。製法も受け継がれてきた。この実績が注目されているのです」と話す
▼「日本の手漉き(てすき)和紙技術」が国連教育科学文化機構(ユネスコ)の無形文化遺産になるという。「品質保証期間 千年」という驚異の技、ふさわしい称号だ

心に残る言葉

高倉健さんの名言

―自分に厳しく、人にはやさしい心―
俳優・歌手の高倉健さんは、「学術や芸術など文化の発展にめざましい業績を上げた人に授与される」文化勲章の、映画界初の受章者である。
 文化勲章は、数ある中で、宮中で最初・11月3日文化の日に親授(天皇陛下から直接受け取る)される。価値の高さは別格である。
なお、天皇陛下が直に授与するのは文化勲章と大勲位以上の勲章に限られる。
高倉健さんは礼儀正しい人物として知られ、すべての共演者に挨拶を忘れない。若い俳優やスタッフにも必ず立ち上がり丁寧にお辞儀したそうで、この人の逝去は、国内や中国の人から惜しまれたという。名言からその人柄が忍ばれる。

高倉健の名言    座右の銘:「不器用ですから」
名言集
1 人が心に想うことは、誰も止めることはできない。
2 人生ってそれ(出会い)だけって気がします。泣いたり、笑ったり、憤ったり、感動したり…。
3 拍手されるより拍手する方が、ずっと心が豊かになる。
4 すべて…私の不徳のいたすところです。
5 何をやったかではなく、何のためにそれをやったのかである。今それが大切に思えてきている。
6 人間にとっていちばん寂しいのは、何を見ても、何を食べても、何の感動もしないこと。感動しなくなったら、人間おしまいだと思うんですね。こんな淋しいことはないと思います。
7 人に裏切られたことなどない。自分が誤解していただけだ。
8 いい風に吹かれていたいですよ。きつい風ばかりに吹かれていると、人に優しくなれないんです。待っていてもいい風は吹いてきません。旅をしないと…。
9 人生っていうのは、人と人の出会い。一生の間にどんな人と出会えるかで、人生はきまるのじゃないですか。
10 一日も早く、あなたにとって大切な人のところへ帰ってあげてください。

BOOKナビ

万葉集と日本人読み継がれる千二百年の歴史(角川選書539)小川靖彦著

日本最古の歌集『万葉集』は、8世紀末から今日まで、愛され続けてきた稀有な歌集。しかし、漢字だけで書かれた万葉歌は、時代によって異なることばに読み下され、時代ごとの考え方や感じ方を強く反映し解釈がなされてきた。紀貫之、紫式部、藤原定家、仙覚、賀茂真淵、佐佐木信綱らが読んだそれぞれの時代の『万葉集』は、どのようなものだったのか。その読まれ方を歴史的にたどり、万葉集の魅力を紹介するとともに、万葉集の仮名表記・訓読、中世歌学、万葉集と近代の日本国家の関係など、さまざまな切り口から、万葉集を検証している。平安時代のさまざまな古筆写本、桂本や藍紙本の書風や書写形式にも言及。

万葉集と日本人読み継がれる千二百年の歴史(角川選書539)小川靖彦著 KADOKAWA 定価1600円+税

事務局だより

総合書道(競書)誌『習字塾』会員の募集!

本誌は,書道教育の粋を集め“整った美しい文字と精緻な編集”で,全国的に定評があります。書道は学業の上達や生涯学習のツールとして,子ども・大人の別なく取組め,趣味としても最高の技芸です。いま,書道は日本文化として再評価されています。
権威の証しとなる段級位や師範認定,文科省後援の「書写検定」にも挑戦できます。

「仮名条幅講座」受講者の募集!(初心者歓迎)

今,日本の素晴しい文化が注目されています。本講座はその真髄でもある仮名書道の極致,奥深さ・妙味を学べる絶好の機会。元大学講師が語る平安文化や現代に至る書道にまつわる歴史・文化の話題は圧巻です。
・開講日:毎月1回・第1火曜日(休日の場合第2火曜日)午後1時30分~3時30分・本会研修室
・講師:西口雅子前静岡大学講師・元静岡英和学院大学講師・書道誌『習字塾』仮名条幅課題執筆
・座 学:古典研究・作品鑑賞・古典仮名にまつわる話題。
・実 技:①古典の鑑賞・添削指導 ②条幅課題の添削・講師模範揮毫・古典の臨書指導

情報紙『書の窓辺』の贈呈について <好評につき配布中>

本情報紙は、書塾や会員と日書協を繋ぐメッセージとして隔月発行しています。創刊から9年余、多くの皆様の求めに応じ発行部数も増加しています。塾によっては、塾と塾生を結ぶ資料活用、全員配布をしています。必要部数をお知らせください。

構成編集 山中俊樹(日本書道教育協会事務局長)
編集副代表 見城正訓  総務担当 小林由香利

2014年12月01日 category : イベント情報, お知らせ, コラム, 情報, 情報一覧 
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